作者の言葉

美しい村で

それは美しい村でした。

山に野生の藤の花が咲く季節。訪れた酪農家の庭にはさくらんぼが

たわわに実り、夕暮れの山の頂では

マーガレットが風に揺れていました。

けれど、農村であるその村の田んぼは干からび、

牛舎は空っぽでした。

子どものいない村でした。

都会の街を移動しながら、あの美しい村の苦悩と

涙を作りだしている明るさに、

壊れたように涙があふれた、あの日の痛み。

それを忘れることを拒否しようと思います。

その決意が書かせてくれた、飛び切り元気な物語です。


                                篠原久美子



私たちのメッセージ



2014年夏、福島での公演がスタートするにあたり、演出家は役者たちに

こう呼びかけました。

「3.11は過去のことではなく、現在おきていることとして

感じながら臨んでいきましょう」

それは役者のそれぞれの想いを胸に刻んでいく作業でもありました。

こうして実現した福島での公演は、深く、重く、

かけがえのない時間となりました。

後に、現地の様々な声が届けられる中で、

「私たちのメッセージがすべて込められていて、3.11を振り返ったり、

新しく前を向いてみようと思えたりのきっかけになりました。

福島の言葉として全国に届けてほしい。」

こんなふうに受け留めて頂けたことに、感謝はもとより

身の引き締まる思いでした。

3.11から何も経ってもこの想いをつなげていきたい。

「空の村号」を届けることで眼差しを持ち続け、

本当に大切なものは何かを探り続ける想いで福島を伝えたい…

アート企画陽だまりの願いです。



 ドラマ・リーディングについて


台本を手に、言葉を、想い、作品の持つメッセージをしっかりと伝えるのがリーディングという表現方法です。

そこには装置も照明も衣裳さえもありません。

ですから、演じる役者に「力」がないとできません。

「力」とはその作品に対する想い、信念を持ち続けられるか…

ということです。

書かれている言葉を真っすぐに届ける大切さ。

リーディングでこその様々な可能性を探ります。